研究概要 |
研究初年度の本年は、当初の計画通り,主として資料の収集に当たった。同時に、いくつかの資料については分析も行った。研究代表者(林)は、アメリカ合衆国におけるメディア研究の実態の一端を調査した。その一つはアメリカ映画『JFK』に関するもので、大統領の暗殺という歴史がいかに扱われているか、それが映画という娯楽メディアであるにもかかわらず、実際どのようなインバクトを現実社会に与えたか、また与えうるか、現実と虚構の扱い方がどのように操作されているか、またされうるかといった問題を、現代の著名な歴史家ヘイドン・ホワイト、メディア研究者ジャネット・スタイガー、マイケル・ローギン、ロバート・バーゴインなどの論考を通して考察した。歴史的・政治的事件が、どのような言語や映像で表現され、結果的にどのような文化的・社会的影響力をもちうるかというテーマは、本研究の中心的問題の一つであり、今後さらに多くの資料を対象とする多様なメディア論を参考に論議を深める予定である。研究分担者(斎藤)は、イギリスの文体論学会(PALA)に出席すると同時に現地のメディア資料の収集を行い、またイギリスの文体論学者であるノッティンガム大学のビーター・ストックウェル博士を東京大学大学院総合文化研究科に招聘して、英語によるイギリスのメディア戦略について検討しあった。一つの仮説として、イギリスのメディアは国内においてより、BBCワールドなど世界に発信しているメディアを用いて、国際語としての英語という理念を流布し,言語文化的に優位に立つ戦略を取っていると考えられる。来年度もこの研究を進める予定である。
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