研究概要 |
研究2年目の本年は、初年度に引き続き資料収集を第一の目的とすると同時に、いくつかの重要な問題についての分析も行った。研究代表者(林)は多分野における活字および映画などの資料の収集に努めたが、2001年9月11日に起こったアメリカ合衆国における同時多発テロ事件という未會有の大事件をめぐる言説がどのようにメディアによって世界に送信され、どのように受容され、その結果きわめて政治的な情況が文化的状況にどのような影響を及ぼしたかという大きな問題の分析にも専心した。アメリカとアルカイダの衝突は、アメリカにおける多文化主義,多言語政策のあり方にも大きな影響を与えかねない大問題であり、今後も他の研究とともに続けていく予定である。研究分担者(斎藤)は前年にイギリスにおいて収集したメディア戦略関係資料や今年度収集したBBCの言語メディア関係資料を分析した。その結果、イギリス国内では多様化している英語を尊重する(主に自由・進歩主義的な学者・有識者の)意見と、標準化を推し進めるべきだとする(主に政府側の)意見が拮抗しているとの仮説を出した。一方で国外に対しては、BBCワールドをはじめとする国際的なメディアを用いて「国際語・世界語としての英語」という理念を積極的に流布し、言語文化的に優位に立とうとする戦略をとっていると考えられるが、最終的な結論は来年度の研究をとおして出す予定である。
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