本研究は英国と米国において英語がどのように戦略的に用いられているか、それは多様なメディアによってどのように表現されているかについて考察したものである。過去数世紀において植民地支配という形態で行われてきた英国の支配、あるいは20世紀後半から現在にいたるまで政治・経済的に資本主義・民主主義の形態に基づき世界を支配しつづけている米国が、英語を「世界の共通語」としてどのように使用し、それをメディアを通してどのように表象しているかという問題を、ジャーナリズムや情報・社会学的視点からではなく、人文科学的視点、とりわけ文学・文化・言語などの視点から考えるところに本研究の特徴がある。 研究期間における具体的成果としては、英国において英語の多様化を尊重する意見と標準化を尊重する意見が国内において問題化されていること、国際語としての英語を積極的に発信する姿勢が国外に対する戦略として実行されている(BBCワールド、ELTECなど)ことなどが明らかになった。また米国においては歴史とその表象手段の関係がどのようなものであるかについて映画『JFK』の分析を行い、奇しくも新たな歴史的大事件となった「2001年9月11日」のテロ事件、および2003年のイラク攻撃などに対して、知識人、テレビメディア、新聞などがどのような反応をしたかを分析した。こうした分析は、言語、メディア、歴史、文化(文学・映画)などと実社会との関係を知る上で必要であり、有意義なものであると考える。(645字)
|