本年度は、A児を対象に日本語文法・獲得の調査・研究を行うとともに、理論的観点から興味深い構文における形態素「する」について分析を試みた。4年間の本研究では軽主要部として分析できるのではないかという見通しのもと、使役、受け身、授受などの形態素に着目するとともに、英語のsee、法助動詞、疑問形態素「か」、さまざまな用法の「の」、などを具体的に分析してきた。 軽動詞としてよく知られているものに「する」がある。「する」の用法の中で比較的研究が手薄である「メアリーは青い目をしている」のような軽動詞構文について廣瀬富男氏と共同研究を行った。軽動詞「する」は意味が希薄であり、そのままでは述語としての役割を果たすことが出来ない。そこでいわばその「救済措置」として「青い」が「する」にLFで引き寄せられ主要述語として機能すると主張した。このため、「青い」など普通は随意的な修飾語がこの構文では義務的になる(*「メアリーは目をしている」)ことを説明することが出来る。この特徴は、関連構文「花子が空港に到着した」等に適用される代表的な分析である「名詞編入」では説明できないので、重要な帰結である。一方、目的語の「目」は所有者を必要とするため、「メアリー」と局地的に関係を結ぶことが出来る位置にLF移動し、所有者・被所有者として認可される。出来上がるLFは「メアリーは目が青い」に相当し、叙述関係が派生的に形成されることになる。 最後に、今年度は本研究の最終年度であるので、4年間の研究の総括をし、報告書を作成した。
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