表示の経済性についての文献を収集し、その問題点を整理した。その問題点をさらに明確にするために、アメリカ合衆国のニューヨーク大学を訪れ、専門家のリチャード、ラーソン教授、ピーター、ラドロウ教授、そしてリチャード、ケイン教授と、情報交換および討議を行った。その結果を現在、論文にまとめている最中である。 具体的には、意味の表示の経済性について、意味合成と呼ばれる現象に関して、意味表示に経済性の原則が働いていることが判明した。つまり、述語や動詞が複数あるのに、対応する項が1つしかない場合、述語が、その一つの項を共有する、共同共有という操作を行うことによって、意味表示を経済的にしていることが判明した。その共同共有の結果、述部のあらわす事象に相の同時性が生じることも判明した。この研究結果は、研究社出版から出版される「機能範疇」という本に書いた。 さらに、統語的には、小節と呼ばれる構文において、統語表示を経済的にして、機能範疇を投射させない現象があることを解明した。具体的には、haveとmakeという同じ使役の動詞においても、前者の場合、機能範疇を投射させないことによって統語表示を経済的にしていることを、否定語や相の助動詞といった機能範疇の分布を見ることによって解明した。現在は、この機能範疇を投射させないことによって、どのような意味的な効果が生じるかを研究中である。 最後に、この統語や意味の表示を経済的にして表示させない英語の現象が日本語にも見ることができるかを研究中である。具体的には、英語の知覚構文には時制を表示させないという統語上の経済性が働いているが、それが、日本語においては、意味的に空虚な「ところ」という表現で表わされるという違いがどこからくるのかを研究中である。日本語の「ところ」については、くろしお出版から出版予定である本の中で論じた。
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