研究概要 |
今年度は、英語データベースを使用して現代英語において強勢変異形を示す単語の現れる文脈、使用頻度を調べ、変異形の出現理由を考察することと、データ収集方法の一つとしてのコーパス言語学に関する文献を読むことを平行して行なってきた。強勢変異という言語事実を説明するためのデータ収集法として,直観と内省によるデータ収集、およびコーパスによるデータ収集の妥当性を検討するため、質問表によって得られた強勢変異形のデータの分布割合を、コーパスによって得られた文脈情報で確認する作業を行なった。ラボフが問題にする「観察者のパラドックス」を乗り越えるために、提出した研究計画通り、今年度を自発的発話におけるプロソディー特徴分析に充てた。 今年度の科学研究費補助金によって購入したコーパスは、基本的には書きことばに関するデータであるが、話しことばのプロソディーを表記したコーパスも含まれているので、これを使って強勢変異を示す語彙を文脈と出現頻度との関連で分析したところ、強勢変異は「語彙拡散モデル」で説明される音変化とは様相が異なることが明らかになりつつある。S字状カーブとしてグラフ化しえない変異の存在を指摘し、強勢変異はいわゆる話者間の変異拡散ではなく、文脈依存の変異形を各話者が文法として内在化しているのではないかと提案するもので、この研究内容を来年度前半に学会で発表したいと考えている。
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