研究概要 |
今年度は、現代英語にみられる強勢変異形は文脈に依存して起こり、リズム的制約だけでなく、統語構造にも影響を受けるという仮説に立って研究を進めた。そして、昨年度の第3回イギリス言語変化会議での研究発表の際の参加者との意見交換や彼らからのコメントに基づき,これまでに得られた個人内変異の分析結果を言語共同体における言語変化の研究へと広げるため,ロンドン大学音声学科の協力を得て,イギリス英語の母語話者20名を被験者とする実験を行い,その分析成果を国内の学会で口頭発表し、加筆修正後、論文として学会誌に寄稿した。 現代イギリス英語において観察される強勢変異形の出現について、強勢を考察する際の典型的な位置である「文の最後の内容語」以外にも単語が現れる例を、現代英語のデータベースから使用頻度も考慮した上で抜き出し、各位置での強勢についてイギリス英語の母語話者20名の発話を録音・分析した。昨年度までの調査で,強勢変異形の出現は「好韻律性」(eurhythmy)といった音韻的要因だけに左右されず,統語的要因も関与していることを確認したが,今回のデータ分析を通じて,形容詞を含む名詞句の複雑性と構造が変異形出現の要因であり,とりわけ、右枝分かれ構造をもつ名詞句は変異の引き金となる環境であることを実証することができた。 英語の分節音の変異については研究が進んでいるが,強勢など超分節音的特徴の変異研究はまだ始まったばかりである。近刊予定の論文では変化の前段階としての変異形出現メカニズム研究のための問題点と今後の課題をまとめた。
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