研究概要 |
平成14年度は、人間の精神活動という抽象的概念をわれわれの身のまわりの自然界の諸現象という具体的概念によって理解する概念メタファーについての研究を進めた。特に今年度は、英語および日本語に共通して見られる、人間の精神活動を水の流れの諸相によって理解する概念メタファーに着目し、詩的レトリックの表現と理解の認知メカニズムを研究した。その成果は次の3つの論文に発表した。(1)「流れる心:詩的メタファーと認知」、(2)"A Mental Activity Is a Flow of Water : Poetic Metaphor and Cognition,"(3)「水のメタファーと心の認知」。(2)は大阪大学・トゥルク大学学術交流プログラムの共同研究論文集掲載論文である。 大阪大学言語文化部において、言語文化共同研究プロジェクト2002『レトリック研究の方法と射程』を実践・統括した。本共同研究は、大阪大学言語文化部の教官6名、同言語文化研究科大学院生6名、計12名より構成され、認知言語学・通時的研究・コーパス言語学・哲学・文学・文体論などさまざまな分野からのアプローチが連携する、レトリックに関する学際的研究であり、本科学研究費補助金研究と深い関連をもつものである。 昨年度に引き続き、共同研究「言語文化レトリック研究会」を主催した。大阪大学言語文化部の教官5名、同言語文化研究科大学院生9名、計14名より構成され、最新の研究動向、重要文献を相互に紹介し、合評・討議を通して今後のレトリック研究の展望を図るものであり、大学院生の指導をも目的としている。本研究会の今年度の研究報告は、上記の『レトリック研究の方法と射程』の中で発表する。
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