平成15年度は、人間の精神の諸相を大地の概念によって理解する概念メタファーに着目し、詩的レトリックの表現と理解の認知メカニズムを研究した。その成果は論文「地のメタファーと心の認知」に発表した。また、本研究期間の全体を通して注目してきた「概念メタファー」を英語教育に応用する方策について研究し、JACET関西支部学習英文法研究会においてその研究結果を口頭発表した。その成果は論文「概念メタファーを英文作成に生かす:発信型英語教育に向けて」に発表した。本発表には反響があり、平成16年6月に開催されるJACET関西支部春季大会において開催されるワークショップ「21世紀の学習英文法を考える:語用論、認知言語学、コーパス言語学研究からの提言」にパネリストとしての参加を要請され、参加する予定である。 言語文化共同研究プロジェクト2003『メタファー研究の方法と射程』に参加した。本共同研究は、大阪大学言語文化部の教官3名、同言語文化研究科大学院生3名、計6名より構成され、通時的・共時的言語研究、文学研究など多角的な見地から、文学作品や日常言語に見られるさまざまなメタファーについて考察する学際的研究であり、本科学研究費補助金研究と密接な関連をもつものである。 昨年度に引き続き、共同研究「言語文化レトリック研究会」を主催した。大阪大学言語文化部の教官5名、同言語文化研究科大学院生11名、計16名より構成され、最新の研究動向、重要文献を相互に紹介し、合評・討議を通して今後のレトリック研究の展望を図るものであり、大学院生の指導をも目的としている。 今年度は最終年度にあたるため、本研究期間の研究の総まとめを行なった。(1)地・水・風・火の四大元素の概念を用いて人間の精神をメタフォリカルに理解する認知プロセス、(2)メトニミー・対義結合・シネクドキー・転移修飾語といった主要レトリックに関わる認知プロセス、(3)連句・和歌・俳句など日本の伝統的な文芸に見られる詩的談話におけるレトリックの役割、(4)概念メタファーを英語教育に生かすための方策、この4つの研究テーマについての4年間の研究結果を総括した。この総括内容の一部は『認知コミュニケーション論』(共著、大修館書店、2004)に発表した。
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