研究概要 |
昨年度に引き続き、ディケンズの編集した週刊誌、Household WordsとAll the Year Roundの内容の分類・点検・吟味を続けた。特にディケンズの「大英帝国」の意識に関する記述を追及し、要田圭治が「『荒涼館』のロンドンと帝国」の表題で、ディケンズ・フェロウシップ日本支部のシンポシアムで発表し、印刷に付し公表した。Bentley's Miscellany, Ainsworth's Magazine, Leigh Hunt's Journal及びLeigh Hunt's Journal and the Printing Machine等の、主に平成12年度の科学研究費で整備した雑誌のマイクロフィルムを、平成13年度に拡大焼付けを行って記事の吟味に入っている。これらの記事の多くは匿名のものが多いが、平成13年度の科研費で入手したThe Wellesley Index to Victorian Periodicalsに基づいて、記事の寄稿執筆者名を可能な限り把握し、また本年度の研究費で揃えたThe Waterloo Directory of English Newspapers and Periodicals 1800-1900の情報を参照しながら、雑誌とその記事・作品の分析を行っている。リー・ハントの思想の流れを汲みつつも、それを文学表現と雑誌記事の中で表象しようとした文筆家集団の存在が明らかになりつつある。彼らの存在と、これまで知られてきた高名なジャーナリストとの関係、さらに彼らとカーライルを中心とする文壇の人々との関係がこれからの研究課題であり、その向こうには、こうした時代の主張の一つがどのような形で文学作品を生み出し、文学作品のなかに隠れ潜んでいるかの問題があり、それを解明する努力を続けていく。
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