研究概要 |
平成14年度は、本研究の最終年度にあたるため、平成12年度に購入して、プリントアウトした、Ainsworth's Magazine, Leigh Hunt's JournalおよびLeigh Hunt's Journal and the Printing Machineのマイクロフィルムの内容の検討に入り、各雑誌の記事、文学作品のタイトルを明らかにして分類を試みた。また、これらのジャンルを明示したデータの整理に務めた。この整理にあたって、かなりの謝金を投入して、デジタル化した形でのデータ入力に多くの時間を割いた。日本では初めての試みとなるこの内容は、報告書の形で印刷に付して報告する。また、フォースター自身の活動については、彼の事績および交友関係の調査を行なった。 作家ディケンズのジャーナリストとしての活動も、彼の生きた時代の、文化の詩学という新しい観点から総合的に捉えなおす作業に入り、植木、要田はそうした視点から、論文をこの研究の一環として各々の名前で精力的に発表し刊行してきた。要田はディケンズの編集した週刊雑誌でデビューしたエリザベス・ギャスケルの研究を行い、「群衆の内と外-ギャスケル、ハーディ、そしてモンスター」を論文としてまとめた。また、ディケンズの活躍し始めた時期にあたる、1830年代の小説作品に見られる犯罪物に注目して、論文「1830年代の小説…新しい警察、そして群集の誕生…」を著わし、文学とジャーナリズムの接点とも言うべき地点を考察した。植木は、論文「Stephen MarcusのDickens批評…書かれざるテキストを求めて…」をまとめて、文字テキストを読むことと同じく、マンチェスターのいう都市を読む視点を、マーカスがエンゲルスの著作から獲得していく過程を明らかにし、社会問題、ジャーナリズム、文芸家集団を包括的に把握する理論的根拠を明示した。さらに、論文「チャールズ・ディケンズと英国ジャーナリズムの文化…"ザ・デイリー・ニューズ"と鉄道方針」を著わし、ディケンズ、フォースターを結ぶジャーナリズム研究の一端を発表した。以上の、研究の成果は、追って、冊子として、まとめて報告する。
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