研究概要 |
本研究では、パーソナル・コンピュータを利用し、G.チョーサーの『カンタベリー物語』(The Canterbury Tales)の84写本のうち、最も重要であると考えられる、Hengwrt(Hg)とEllesmere(El)写本を選び、その比較コンコーダンスの作成を実践した。The Canterbury TalesのHg、El写本の入力と比較コンコーダンスの作成を、Ralph Hanna III intro.(1989),The Ellesmere Manuscript of Chaucer's Canterbury Tales : A Working Facsimile, D.S. Brewer、P.G.Ruggiers ed.(1979), The Canterbury Tales : A Facsimile and Transcription of the Hengwrt Manuscript with Variants from the Ellesmere Manuscript, University of Oklahoma Press.)、及びThe Canterbury Tales Project(ディレクターはN.Blake)作成の電子ハイパーテクスト(CD-ROM)、The Hengwrt Chaucer-Digital Facsimuile(ed.Estelle Stubb, 2000)を基に押し進めた。Blake教授とSmbb女史から、当該CD-ROMデータの使用許可を得ると同時に比較コンコーダンス作成の編集に係わる助言も得た。現在一部文字フォントの調整(イルミネーション、装飾文字、セジューラ等について、現行の記号と写本の実際の文字形態との置換)を除き、比較コンコーダンスを作成した。CD-ROMでは、写本上の違いは、左右で対応して見るようになっていて、同定・叙述しにくいが、我々の比較コンコーダンスは、写本行の対応部での相違点が、当該語のすぐ下で、網羅的に確認できるようになっていて、同定・叙述し易いものである。 Hg, El写本は、同一写字生の作と言われるが、文字、語の境界、セジューラの位置、語順、機能語(否定辞・数量詞等)等、種々の面で違いが見られる。本コンコーダンスは、写本間の類似性・相違点を客観的・体系的に同定・記述することを可能にする。チョーサーのテクスト批評及び言語研究に対し重要な基礎データを提供できるものである。本コンコーダンスによる研究成果は随時公表する予定である。
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