平成13年度も、引き続き戦争時におけるアメリカとカナダの日系作家の創作活動を検討した。昨年度の予備的作業をもとに、今年度はアメリカの日系作家、ヒサエ・ヤマモトとフカコ・ヤマウチの戦争中に書いた作品を昨年度の科学研究費により購入したポストン収容所において発行されていた新聞、ポストン・クロニクルを読み、戦争中のヤマモトやヤマウチが書いた作品を収集し、テーマ別に整理した。それらをもとに、強制収容という日系人にとり最も苛酷な体験が多感な時期を迎えていた二人の作家に与えた影響を考察した。制約の多い生活を強いられ、表現の自由を剥奪されながらも、ヤマモトとヤマウチは、強制収容に対する批判的な視点を微妙な表現を用いながらも示唆する。特にヤマモトは、シリーズもののミステリーを通じて、収容所内における日系人の飢餓感を描き、強制収容にたいする自身の深い絶望感を暗示している。さらに、今年は、ワカコ・ヤマウチが来日したため、彼女とのインターヴューを通じて戦争が日系人に与えた悲劇性やヤマモトとの関係なども明らかにすることができた。 また、カナダの日系作家に関しては、3月にトロントで行われた国際会議に出席して、研究者との交流を通して情報交換をすることができた。カナダの日系作家については、戦争中も発行されていたニューカナディアンに戦争中の日系カナダ人の状況が反映されている。今年の夏に科研費で出張したカリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館にあるマイクロフィルムを調査して戦争中における日系作家の活動の一端を把握することができた。
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