平成12年度の最大の研究成果は、7月20日から8月9日までのイギリス研究出張によるものである。第一にDorchesterで開催されたThe Fourteenth International Thomas Hardy Conferenceに出席し、最新のHardy研究の情報を、英米の研究者と交換できたこと、第二に初めてSt.Juliot教会(Hardyが最初の妻Emmaと出会った場所)を訪ね、またHardyのbirthplaceのHardy's Cottageや功なりし後建ててEmmaやFlorenceと住んだMax Gateを再訪できたことである。短編集A Group of Noble Damesに因んでA Group of Noble Houses'とつけられたCoach Tourによって、一般に公開されていないDorchester周辺の貴族や大地主の館を訪ねることができて、農村社会の階層性を実感した。第三の収穫はConferenceの合間やその前後の図書館での研究である。DorchesterにあるDorset County MuseumのHardy CollectionはNorman Pageも資料を収集しているほどの充実したものであった。さらにEaton College LibraryではMichael Millgateが編集したLetters of Emma and Florence Hardyに収録されていないEmmaやFlorenceの直筆の葉書や手紙を目にすることができた。今回全てを読み通すことが不可能であったので、次回はどうしてもこの宝の山に取り組みたいと考えている。さらにBritish LibrarayではFlorenceの子供向けの著書などを読むことができた。Florenceの実像を探るのには非常に貴重な資料になると思う。以上で目下は入手した資料を読むことに追われているが、平成13年度は、さらに資料を充実させたうえで研究テーマをまとめることに着手したいと考えている。
|