研究概要 |
平成13年度に引き続き、16/17世紀及びそれ以前の地中海世界を中心とした文化史、地誌、異文化交流史関係の文献から、スペインとムーア人に関する資料を重点的に収集し、英国ルネサンス演劇における両者の受容の経緯について検証を進めた。2001年8月と12月には、東北大学文学部英文科にて、同研究室に設置のCD-Rom『英国劇文学集成』を閲覧した。この結果、Faire Em, the Miller's Daughter、A Larum for London他3篇のテクストを収集し、The Spanish Tragedyの材源とされる劇作品を網羅的に検証することができた。また、2001年4月にはバレンシアで開催された第7回World Shakespeare Congressのセミナー'Spain and Early Modem Drama'にセミナー・リーダーとして参加し、英国の初期近代劇とスペインの関係について、広く地中海世界を視野に入れた観点から意見交換の場を持った。引き続きブレーメンで開催されたドイツ・シェイクスピア学会(4月)では、シェイクスピアとグローバリズムについて招待講演を行い、地中海世界を舞台とする『アントニーとクレオパトラ』に言及しつつ、シェイクスピアによって活性化される異文化交流の可能性について論じた。また、2001年10月には『シェイクスピアを読み直す』(研究社)が刊行された。同書に所収の論文『モンストラスな、余りにモンストラスな-『オセロー』と隠蔽-」は、バレンシアでのセミナーの成果を取り入れつつ、地中海の要衝ヴェニスの白人キリスト教文化とムーア人の関係を検証し、劇中に隠蔽された異文化排除の実相を読み解いたものである。
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