平成13年度は、基本的に資料の収集と解読に費やした。そして著作権の誕生の歴史を具体的に把握し、バルザック、ゾラといった実作者の反応を、「フランス文芸家協会」の活動との関連をも含めて認識することができた。ゾラの論文「文学における金銭」(『実験小説論』所収)を、大学院での授業で取り上げ、詳しい注解の試みを開始した。 芝居の原作料・脚本料システムの詳細については、資料収集のために現地に赴く時間がとれず、次年度の課題となった。 ・平成13年12月に獨協大学で開催された国際シンポジウム「バルザックの世紀」において、「19世紀出版事情--日仏の比較から」を発表し、とりわけ貸本屋文化の日仏の差異に関してフランス、カナダの研究者と議論を交わし、大いに得るところがあった。 ・凸版印刷株式会社の創立100周年の記念事業『印刷博物誌』(凸版印刷;編集委員=粟津潔・樺山紘一・合庭惇など5名)に編纂協力者4名のひとりとして参加してきたが、平成13年6月、ようやく刊行することができた。1194ページの大冊であり、この分野において画期をなすものと思われる。 本研究の延長として《ゾラ・コレクション》全10巻(藤原書店)を平成14年度から刊行することが決定し、準備に入っている(編者=宮下志朗ならびに小倉孝誠都立大助教授)。
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