バルザック、ゾラ、フロベールといった19世紀の作家の書簡集・雑文、さらには出版契約等の一次資料に焦点を当て、著作権・印税に関する発言を具体的に整理した。そして法的システムとの関連で、作家がいかなる象徴闘争を演じているのかについて、把握した。その成果を、論文あるいは単著(『書物史のために』晶文社)として発表した。 また、本研究と深く関連するかたちで、次のような貢献をすることができた。 ・平成13年12月に獨協大学で開催された国際シンポジウム「バルザックの世紀」において、貸本屋文化の日仏の差異に関して発表をおこない、とりわけ欧米の研究者に、こうしたアプローチの有効性を認識させた。 ・凸版印刷株式会社の創立100周年記念事業「印刷博物誌』(凸版印刷;編集委員=粟津潔・樺山紘一・合庭惇など5名)に、編纂協力者4名のひとりとして参加し、具体的な編集作業にあたった。本書はゲスナ-Gesner賞に輝いた。 ・平成14年11月に刊行開始の、《ゾラ・コレクション》全11巻、別巻1(藤原書店)に、小倉孝誠(慶応大学教授)とともに編者として参画している。本邦初のゾラ著作集であり、文学の象徴闘争をめぐるテクストの翻訳も収録を予定している(なお申請者は、第1巻「初期作品集」を担当)。 以上の成果を生かして、新聞小説などの受容をめぐる、新たな研究に着手している(科研費による研究課題は「19世紀後半のフランスにおける小説の受容に関する、文化史的研究」)。
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