研究概要 |
本年度は、イデオロジーなど、フランス革命期の哲学的言説を、本格的にコーパス言語学的研究に付すべく、その数理的な方法論を確立するための理論的模索を多岐にわたり行った。前年度は、カバニスの『第一原因についてのF氏への手紙』とメスメールの『医学博士F.-A.メスメールによる、彼の発見についての論文』の両テキスト間で現れた高頻度名詞と共起する有意味単語データを因子分析にかけたが、このような情報検索学の計量文体論への導入が方法論的に普遍性があるかどうか、フランス語学、フランス語教育、古文書学一般等の関連諸分野においても等価な試みを行った。特にフランス語の人称代名詞として等価な"on","1'on"の使用区別について、Le Mondeコーパスを対象に、それらと共起する単語の特性データを自動抽出し、両者の使い分けがどのような因果関係によって為されるか、確率的言語モデルを利用して明らかにした。このようなテキストマイニング方法を、次年度では新たに以前よりのカバニス・メスメール比較研究に還元すべく、現在、準備中である。また今年度は、文書比較の方法として、単語データの因子分析から得られた類似性指標を基に、文書間の系統発生仮説を検証する方法論も世に問うたが(『新約聖書のルーツを求めて-その統計解析-』)、カバニス・メスメール比較研究の場合、比較の基準となる第三文書が必要である。特に、カバニスの弟子でストア主義、メスメリスムなど、医学哲学の広い領域に跨って活動したアリベールに着目して単語データを収集する予定である。
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