研究概要 |
枡田は歴史的推移の観点から、小川は類型論的位置付けから、それぞれ対格をめぐる変遷と相違をつかさどるパラメータの導出に努めた。本年度購入した通時言語学書籍、言語類型論書籍(Routledge Language Comparison,Max Niemeyer Linguistische Arbeiten,Reihe Germanistische Linguistik,Stauffenburg Studien zur deutschen Grammatikなどの叢書)を活用し、同じく本年度購入のパーソナル・コンピュータおよび学生アルバイトによる研究補助の下、当該言語データの収集・整理・分類を推進すると共に、それらに言語学的考察を加えた。その成果に関して関係諸氏(北海道大学言語文化部、ホスト:筑和正格氏)と議論を重ねた。今年度の研究実績として下記の諸論文を刊行した。具体的な内容は、枡田が1)中世ドイツ語における属格目的語から対格目的語への移行の実証的言語データの収集・分類を行ない、2)それに統語的・意味的説明を加え、さらに3)他のゲルマン諸語、とりわけ中世英語における類似の言語現象との照応を通じてより一般性の高い仮説の提示を目指した。また小川は、1)ドイツ語を中心としたヨーロッパ諸語と日本語を中心としたアジア諸語における対格目的語構文の実証的データの収集・整理を出発点としてそれらの比較を行ない、2)その相違が他の一連の文法現象(与格構文、再帰構文、受動構文、使役構文など)といかに連動関係にあるかを考察することを通じて3)個別言語の全体的特徴としての類型化の可能性を示唆した。
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