研究概要 |
本研究は,ロシア・ソヴィエトにおいて発達した内容的言語類型論を三つの側面から研究したものである. 第一の側面は,内容的類型論を歴史的側面より研究したものであり,特に1920-1940年代に焦点を当てて,この内容的類型論の成立と発達の経緯を大量の文献資料によって跡づけた.この研究成果は,石田修一の研究報告書,「ソヴィエト言語学史再考」による研究である. 第二の研究の側面は,ソヴィエトの類型学者によって構築された内容的類型論の理論的なアプローチである.この点では,山口巌が内容的類型論の枠組みを用いて,印欧語における時制とアスペクトの文法範疇を分析した.この成果として,山口巌の内容的類型論から考察した印欧語の時制についての研究報告書,「時間と時制についての一考察」がある. 第三の研究の側面は,具体的な能格言語の資料を基に内容的類型学の検討と言語理論の発展を目指した研究である.柳沢民雄は平成12年度と平成13年度の夏にグルジア共和国トビリシ市にて北西カフカース語に属するアブハズ語のアブジィ方言の動詞形態論の調査を行った.この調査資料を基にして,アブハズ語動詞の構造を記述,分析した.この研究成果は,柳沢民雄の研究報告書,「アブハズ語動詞構造概説」である.しかしアブハズ語の調査に関しては,時間的な制約のために調査できたのは,アブハズ語の動詞の基本語彙の活用と基本的な文法範疇のみであり,未だテンス・アスペクト範疇や統語論の調査が不十分である.これは今後の言語調査の課題である.
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