研究概要 |
以前からの研究によってその重要性が明らかとなった江戸時代のアイヌ語語彙集「蝦夷記」,「蝦夷語集」のテキスト研究を続行し,その翻刻のための基礎作業をひとまず終えることができた.これらの作業を通して,江戸時代のアイヌ語には,現代のアイヌ語資料には現れないか,非常に断片的にしか残っていない種類の語彙が大量に存在した可能性が明らかとなった.すなわち,同じ対象に対して,場面に応じて様々な語彙が使い分けられたことを示す事例が数多く発見され,これまでのアイヌ語の見方を修正する必要の生ずる可能性が出てきたと言える(例えば,同じく「人」を意味する語でも,場面によって使い分けられる,現代では知られていない別な単語が数多く存在した).このような研究によって,現代のアイヌ語の語彙的,文法的研究にも多くの点で有用な知見が今回得られた.
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