1、オランダ語やウエールズ語では非対格動詞が受動化を拒むという観察に基づいて「関係文法」の枠組みで提唱された1-Advancement Exclusiveness Law(1AEX)は更に大きな主題関係に関する一般化のほんの一部を捉えただけの不完全な一般化である。これはリトアニア語やトルコ語では他動詞、能格動詞、非対格動詞の全てが受動化可能である事(Timberlake)、フランス語や英語では能格動詞と非対格動詞の両方が受動化を拒む事、日本語や韓国語では使役化が「主語への昇格」を含まないにも関わらず、1AEXと全く同様の現象を示す事などから結論付けられる。 2、観察を更に名詞化、非編入迂言表現などの形態・統語的現象に広げると、これらの現象が、動詞が与えるθ役割の数に反応して共起する言語、そのθ役割のタイプに反応して共起する言語、更にそのどちらにも反応する言語、どちらにも反応しない言語、という類型化が可能になる。 本年度はここまで、上の1と2に要約した形態・統語的現象に関する一般化の分析を意味論に詳しい研究者の協力を得て更に進めて来たが、一身上の都合により7月をもって退職する事になったため、残念ながら科学研究費補助金による本研究を辞退せざるをえない事となった。
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