本調査・研究は、新聞投書を利用して、ジェンダーをめぐる意識調査を行なうことを目的としている。投書の個人情報をふせて、書き手の性を推測し、その理由も考えることで、回答者の中にある、ジェンダー意識に気づくのに有効であることが、調査から確認できる。調査結果より、投書の書き手として想定される典型は、男性はサラリーマン、女性は主婦であり、これは、性別役割分業体制における成入男女のイメージに通づるものであることが分かった。さらに、語彙・文体・内容等で判断根拠として提示されたものは、男性の場合、力強く、主張のはっきりした書き方で、仕事をする中で身につけたと思われる専門性あふれる内容を論理的に展開し、広い視野にたって表現しているとしている。一方、女性の場合、丁寧でやわらかい書き方をしつつも、働いていない、つまり、主婦として生活しているためか、視野がせまく、ワイドショーなどの受け売りのような情報しかなく、感情的で、よくねられていない表現をしているとしている。このような書き言葉を通したジェンダーステレオタイプは、男性ばかりでなく、女性も持ち合わせているものであり、特に女性は女性を否定的にみなしてしまっていることが判明した。 今回の調査・研究は、投書の書き手の性を推測する中で、回答者の中にある内面化されたジェンダーを引き出すことにある。男女平等を標榜する教育現場において、なかなか、男女をめぐる本音を引き出しにくいため、このような方法が有効である。内面化されたジェンダーに気づくことで、自らの「らしさ」を相対化し、自由に生きようとする、ジェンダー・フリーの精神に到達できるのではないかと考えている。 今回の調査・研究は、今後もさらにその方法を吟味し、ジェンダー意識の気づきをより促進するようなものにするつもりである。男女共同参画社会の実現に向けて、さらに取り組んでいこうと考えている。
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