研究課題/領域番号 |
12610554
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
町田 健 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60190378)
|
研究分担者 |
佐久間 淳一 名古屋大学, 文学研究科, 助教授 (60260585)
田村 健一 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (90179896)
柳沢 民雄 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 助教授 (80220185)
櫻井 健 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (90315870)
|
キーワード | 文法機能 / 名詞 / 動詞 / 意味役割 / 格 / 時制 / 言語類型 / 語順 |
研究概要 |
本年度は3年間の研究の成果を最終的にとりまとめた。文法的機能の表示は、任意の言語で作られるあらゆる文に対応する事態において実現されなければならず、機能をできるだけ普遍性を失わない形で事態表示に組み込むことは、言語表出と言語理解の双方を適切に処理することを目的とする本来の言語研究において不可欠の手段である。本研究では、コーカサス諸語ツングース諸語、ウラル諸語、ゲルマン諸語そして日本語という、十分に多様な言語資料を分析することによって、自然言語一般において文法的機能がいかなる方法によって表示されるのかを詳細に検討することができた。他の言語に比べて大きな数の機能形態素が述語に付加されることにより、述語の表示する事態がより限定された形になるコーカサス諸語の分析成果は、従来それほど研究の対象とはなっていなかったこのタイプの言語が示す文法的特徴をも含めた形で、事態表示をより一般化することに貢献した。名詞の意味的機能を表示する手段が、世界の諸言語の中でも際だって豊富なウラル諸語の分析は、離散的な性質をもつと考えられる意味役割の普遍的な設定を可能にするものである。名詞がもつもう一つ重要な性質である定性を表示する冠詞の機能は、冠詞の有無に関わらず、事態の成分としての個体や事態の集合の性質を普遍的に表示するために欠くべからざる視点を提供する。この点で、冠詞をもつ言語であるゲルマン語の分析は、研究対象となっている他の言語に冠詞が見られないだけに、名詞の意味的性質をより正確に表示すると同時に、冠詞のもつ統語的性質をも明らかにした。ツングース諸語と日本語の分析は、個々の機能形態素が一意的に文法的機能を表示するという特質をもつ言語であるため、事態の成分にいかなる意味的・文法的特徴を与えるのが適切かに関して、すぐれて基本的な知見をもたらすものであった。
|