本研究は、チベット・ビルマ系言語に属するキナウル語の記述的研究の3年目である。 今年度は、昨年度に引き続き主として調査によって得られた資料の整理と分析の準備を行った。すなわち、得られた一次言語資料を電子化し、また、キナウル語に関する文献の資料も入力しつつある。 昨年度までは、現地調査に基づき名詞の屈折に関わる資料を収集整理してきた。本年度は、夏期休暇中の調査を行うことができなかったため、調査は年度末に行われる。 ただし、本科研費の研究実績の成果として、9月にスイスで行われた第8回ヒマラヤ諸言語シンポジウムにおいて研究発表を行った(発表題目: 'On the deictic patterns in Kinnauri(Pangi diadect)')。これは、キナウル語の動詞人称接辞や移動の動詞が基本的には同じ直示パターンに基づいていることを示すものであった。この研究発表については、今年度末に行う調査に基づいて修正を施した上で論文を発表の予定である。なお、11月に京都で行われた科学研究費特定領域研究「環太平洋の<消滅に瀕した言語>にかんする緊急調査研究」第6回全体会議でも、同内容の発表を行った(発表題目:「キナウル語パンギ方言の動詞接辞について」)。
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