本研究は、チベット・ビルマ系言語に属するキナウル語の記述的研究を行うものであり、本課題の4年目である。 今年度は、昨年度の調査を年度末に行ったため、主として調査によって得られた資料の整理と分析の準備を行った。調査により得られた資料は、主として動詞に関するものである。得られた一次言語資料は電子化し、また、キナウル語に関する文献の資料も入力しつつある。さらに、研究の次の段階を目指し、すでに収集してあるデータを整理し直し、これまで資料の不備を補う調査の準備も行いつつある。 語彙資料について、具体的には、キナウル語がヒンディー語との接触が大きい点を考慮に入れ、ヒンディー語の語彙をキナウル語の資料に付け加えている。語彙調査は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所が出版した語彙目録に基づき行ったが、そこに掲載されているヒンディー語の語彙は、キナウル語との対応を見ると必ずしも適切でない場合もあり、現地調査によって確認をしながら資料を修正しなければならない。これにより、キナウル語・日本語・英語・ヒンディー語を対照する語彙集を目指す。 今年度の調査も年度末に行われた。今年度の調査においては、上に書いた語彙集作成のための語彙資料収集とともに、とくに動詞の意味的形態的分析を行うための資料を採取した。 なお、昨年度本科研費の研究実績の成果としてスイスでの第8回ヒマラヤ諸言語シンポジウムにおいて行った研究発表(発表題目:'On the deictic patterns in Kinnauri(Pangi dialect)')は今年度当初論文としてシンポジウムの議事録に投稿し掲載予定であるが、未出版である。
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