本研究は、アメリカ合衆国の先住民による文学の中で、女性、特に母親がどのように表象されているかを研究し、そこに先住民文化の母権的な母親像がどのように反映され、あるいは選択的に利用されているかを、特にレズリー・シルコウに注目して検証しようとしたものである。その中で、従来フェミニズム文学批評で用いられていた母子関係モデル、母親モデルを批判的に使用し、その有効性および限界についても、具体的な事例に即して研究することとなった。 平成12年度には先住民の文化、文学に関する文献を、特に女性、母親、母権制、に関するものを中心に、MLA International Bibliographyなどのデータベースソフトを利用して検索し、その結果に基づいて文献表を作成して未入手の文献の収集に着手した。 同時に文学における母親像、母子関係についての専門書についても検索、文献表の作成を行ない、未入手の文献を収集した。入手した文献の研究を開始し、その研究成果の一部を、6月の日本アメリカ学会全国大会で「黒人作家の描くディアスポラ」として発表し、国内外の参加者よりレビューを受けた。また8月および3月に渡米、インディアナ大学文学部スーザン・グーバー教授らより中間成果に関してレビューを受けた。さらに成果の一部を、平成13年1月に口頭発表「ジェンダー・オーセンティシティ・女神信仰」の形で公開した。 平成13年度には資料収集を続行すると同時に、英語、日本語両方で論文執筆を進め、国内およびアメリカ合衆国の学術誌に投稿する準備を行なった。8月に渡米しスーザン・グーバー教授ら複数の専門家よりレビューを受けると同時に、合衆国における口頭および学術雑誌への発表についてアドバイスを受けた。 帰国後、レビューの結果をとりいれて論文を完成させた(成果報告書に収録予定。また学術誌に投稿予定)。また平成14年2月、その成果の一部分をとりいれた口頭発表「チャイナタウンの孫悟空」を行なった。
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