平成12年度はベルギーのヴォルプスベーデと称され、ベルギー象徴派のなかで特異な役割を果たしたガン市郊外ラーテム・サン・マルタン村の芸術家コロニーを調査した。アルベール・セルヴェースの旧居に滞在し、同派の指導的な芸術家アルビン・フアン・デン・アベーレ、ジョルジュ・ミンネに関する遺跡遺稿を調査した。とくにガン市現代美術館、デインツ美術館、デュルル美術館の3館が同一テーマで開催したラーテム・サン・マルタン派に関わる総合的な展覧会は、未発表・未発掘のまま置かれていた資料を網羅して、画期的な展覧会であった。同展覧会を組織したスタッフとも接触を持つことができ、今後の研究に重要な素地を与えてくれた。 平成13年はリエージュ美術館ならびにナミュール市美術館、とりわけ同市立フェリシアン・ロップス美術館において19世紀末ワロン派の美術・文学運動について調査することができた。とりわけロップス美術館は、リニューアルの作業にかかっていたが、新装なった部分もあり、学術的に一層組織整備された美術館に生まれ変わろうとしていた。 本研究主題にもとづく調査研究によって、ベルギー象徴派運動の基礎的な概要は把握できたし、ジェイムズ・アンソール、フェルナン・クノップフ、コンスタン・モンタルド、ジャン・デルヴィル、フェリシャン・ロップス、レオン・スピリアールト、ドグーブ・ドヌンク、アントワーヌ・ヴィールツ、ジョルジュ、ミンネならびにラーテム・サン・マルタン派についてはほぼ記述を終えることができた。 ひきつづき社会主義的傾向を強く見せるコンスタンタン・ムーニエ、レオン・フレデリック、アルベール・セルヴェースらについて調査を勧め、その運動と作品について分析を進めることを今後の課題としたい。
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