研究概要 |
1.理論的分析の面 社会秩序と法文化の創発とダイナミクスに対する進化ゲーム論的分析,自己組織論・秩序創発論からの分析として,(1)協力関係形成における進化心理学的研究(人間の心理学と霊長類の進化行動学など),(2)利他的行動の創発における進化論の「ネオ・グループ・セレクション」の理論(遺伝子が集団行動を介して,他の集団との競争をするというモデル),(3)文化の模倣による伝播・複製の「ミーム論」(メイト・セレクションにおける模倣行動から,性選択と文化,文化伝達のダイナミクスなど),(4)繰り返しゲームにおける協力関係の創発と規範の役割についての研究(とりわけ,制裁システムがある場合と,制裁をしないことを制裁するシステムがある場合等の研究)場合を検討し,分析道具概念の概要の構築をすることができた.次年度は,この分析道具概念を彫琢してコンピュータシミュレイション化する. 2.経験科学的研究の面 (1)裁判利用における人々の「支払意思額」と,種々の紛争解決制度(民事裁判,少額裁判,調停,紛争解決センター)の現実の紛争解決費用の関係(現状の種々の紛争解決制度の利用の総費用の社会的評価のデータ),(2)「支払意思額」と紛争解決手続きにかかる時間の関係性(早ければ早いほどいいのか,適正な審理期間とは,などを解明),(3)裁判と法と法律家に対する人々の文化的イメージ(人々に法回避の文化はあるのか?),(4)人々の紛争経験とその解決行動の現実相(社会における紛争の頻度と,紛争の際の紛争解決選択肢の現実性の調査),などの実証的調査のための質問票を作成し,プリテストの段階に到達している.次年度は本調査を実施してデータ分析を施して結果を出す.
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