研究概要 |
平成13年度は,(1)文部科学省,経済産業省,厚生労働省による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」などの政府指針における既存試料の研究利用とインフォームド・コンセントの問題に関する主張の活字化,(2)未成年者に対する遺伝子診断・検査の許容される可能性を追求し,その条件の明確化を図ること,(3)欧米におけるwrongful birth訴訟及びwrongful life訴訟の動向の把握,(4)遺伝子解析研究をはじめとする医学研究について,生命倫理の観点からのあり方の追求,の研究を行った。 (1)については,研究発表に雑誌論文を掲出した。(2)については,デュシャンヌ型筋ジストロフィーを念頭においた保因者診断において,未成年患者に対する遺伝子検査の必要性,患者に対する不利益・危険の小ささなどからその許容の可能性を追求した。(3)については,アメリカについて最近の判決を調査した結果,wrongful birth訴訟については(排除する法律が制定されていない限り)ほぼ普遍的に承認される一方,wrongful life訴訟については,それを認める州は1980年代以降変化なく,3州にとどまっていた。また,フランスでは,2000年11月の破段院判決でwrongful life訴訟の成立が認められたが,2002年1月にwrongful life訴訟を認めず,wrongful birth訴訟を認める法律が国民議会で可決され,アメリカの大勢と同じ傾向が見られた。(4)については,倫理審査委員会の重要性に照らし,若干の聞き取り調査を踏まえて,そこで得られた問題点を,WHOの倫理委員会,運営指針やアメリカの生命倫理諮問委員会の報告書などとつきあわせて,倫理委の位置づけ,委員の選任,教育・研修,審査対象審査の指針,口頭説明の要否,記録の作成,記録と会議の公開,モニタリング,などについてそのあり方を検討した。(4)については2002年度も引き続き研究作業を続ける。
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