本研究はこれまでの米国における契約理論、交渉理論の検討、とりわけ、いわゆる関係的契約をめぐる理論とその適用による法杜会学的な契約交渉過程の実証研究、ならびに企業等の組織が契約交渉に与える影響を射程に収めた組織的契約理論などの研究をベースに、日タイ契約関係に関するデータを分析し、通貨危機時における日系企業のタイでの契約再交渉過程の特質を明らかにしようとしたものである 具体的には日タイ国際契約取引関係について、一方でタイの外国投資法、契約法、民事訴訟法などについての変容をフォローしつつ、現地にて日系タイ企業の行動パターンについて、各社の駐在員、担当者へのインタビュー調査を実施した。とりわけ通貨危機時の紛争処理行動と、それが長期的な契約関係のあり方や企業戦略とどのようにかかわっているのかえを検証し、その上で関係的契約論や組織論的な契約理解が、実証的にも妥当性を有していることを確認した。 また、さらに、このタイでの法的交渉関係で得た知見をベースにより広く、アジアにおける紛争解決制度研究の基本的視座の構築へも発展的に詩作を展開した。 本研究は、本年度でいったん終了するが、現在、京都大学の「東アジアの法と近代化」(4ヵ年計画)についての共同研究、およびカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学を中心とするアジアの紛争解決共同研究プロジェクト(5カ年計画)にも日本側代表者として参加しており、その中で、本研究で得た知見をさらに発展的に展開していくことを考えている。
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