1.市民が権利主張や訴訟といったしかたで法を動員する場合にそこにどのような社会的要因が作用しているかは法社会学研究の重要な課題であり、従来の研究においても、法意識・資源・関係などさまざまな要因が析出されてきたが、本研究は、市民の法動員のプロセスにおいてボランタリー・アソシエーション(自発的集団)がはたす機能を、具体的な事例の調査研究を通じて実証的に解明することを試みた。 2.初年度である平成12年度においては、主として、次の2つの作業を行い、それぞれに重要な成果が得られた。第1は、市民の法動員におけるボランタリー・アソシエーションの機能に関する理論モデルの構築である。法社会学の領域においてこれまで蓄積されてきた法の動員に関する研究成果と、社会学・組織論・経営学等において蓄積されてきたアソシエーションに関する研究成果とを総合的に整理・分析し、本研究独自の理論モデルを構築しえたと考えている。第2に、法動員援助型のボランタリー・アソシエーションの実態を明らかにしたことである。消費者保護・環境保護・情報公開・社会福祉・まちづくりなど広範な領域で具体的な事例を集積でき、日本社会でも、近年さまざまな領域で、法動員援助型のボランタリー・アソシエーションの活発化が観察された。 3.最終年度となる来年度は、引き続き具体的な事実の収集に努めるとともに、当初構築した理論モデルを検証し、必要に応じて修正を加えた上で、より洗練された理論モデルを完成させることにする。それを通じて、(1)日本社会における法動員の具体的様相についての知見を豊かにするとともに、(2)これから到来するであろう法化社会における法・個人・集団の関係についての理論的示唆を得ることができると考えている。
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