1.社会成員の法動員のプロセスに作用する社会的要因を法社会学的に考察しようとする場合、さまざまな中間集団が及ぼす影響は重要な研究課題であるが、本研究では、とくに市民の法動員におけるボランタリー・アソシエーション(自発的結社)の機能に焦点を合わせ、それを実証的かつ日独比較の視点も交えて解明する作業を行った。この作業を通じて得られた主要な知見は以下の通りである。 2.まずドイツでは、消費者保護・借家人保護・環境保護・社会福祉など様々な領域でボランタリー・アソシエーションが市民の法動員を活発に援助する活動を行っており、かかるボランタリー・アソシエーションの活動が、ドイツ社会の「法化」を進行させた主要な要因の1つとなっている。 3.他方、日本でも、とりわけ1990年代以降、様々な分野でボランタリー・アソシエーションの活動が活発化しており、しかも、各地の市民オンブズマン活動に典型的に見られるように、その活動を法や訴訟に志向させる傾向も強まってきている。その際、ボランタリー・アソシエーションは、個人では調達困難な経済的・人的・知的資源を提供することによって市民の法動員を促進するとともに、構成員相互の日常的な接触やコミュニケーションを通じて法動員に積極的な法意識形成を媒介するという重要な機能をはたしている。今後このようなボランタリー・アソシエーションが一層の発展を遂げるならば、日本社会における法動員の場面が拡大し、そのマクロな集積として、日本社会の「法化」が促進されるものと予想される。 4.以上の知見をふまえて、各国の法化の進行を、各国社会における中間集団、とりわけボランタリー・アソシエーションの広がりと定着という社会構造的要因によって説明するアプローチの有効性を示しえた点が、本研究の主要な成果である。
|