本年度は、研究計画の初年度であり、提出した計画に基づき、まず、ノートパソコン、デジタルカメラ、MOドライブ等を購入し、研究のハード面での整備を行った。 ついで、1930年代から40年代の農地立法・施策を検討するため、茨城県立歴史館、群馬県立文書館に3回にわたって調査に赴いた。 茨城県では、農業史についてのまとまりのある研究がなされており、これらの文献・資料を閲覧・購入しつつ、歴史館所蔵の小作調停資料、経済更生運動関係資料を閲覧・撮影した。このうち、1940年代の小作調停資料は、全国的にも珍しいもので、この時期の小作関係の行き詰まり→農地立法への動向を知る貴重なものといえる。今後も継続して、調査を続けたい。 群馬県立文書館は、1930年代から40年代の貴重な小作関係資料、農地立法関係資料を豊富に所蔵しており、資料の宝庫といってもいい。本年度の調査は、この資料群のなかで、農会及び小作調停関係資料に焦点をしぼった。近年の研究によると、農会については、本来「官製」的であったものが、第1次世界大戦後、その性質をかえて、生産農民層をとらえ出すことが指摘されている。この問題は、小作関係の動向と密接に関係しており、土地所有権の重畳構造を「ムラ」の規制力との関連で考察するという本研究にとっても無視できない重要な検討課題である。また、群馬県の小作調停資料は、他県に類をみないほどよく残っており、長期的なスパンでの小作関係の変動がかなりよくわかる。小作調停については、小作料減額免除規定の規範構造に注目することが重要だが、この観点に立ったとき、群馬県新田郡、山田郡などは、注目すべき調停条項を生み出していることがわかる。これら資料は、いくつか撮影したが、来年度さらに本格的に調査、分析する必要がある。
|