本年度の研究実施計画に書いたように、昨年度から収集してきた資料の分析にあたり、高性能CPUを搭載したパソコンが必要となり、まず、その購入を行った。これによって、収集資料の効率的な分類が可能となった。 つぎに、今年度は、昨年の調査によって検出した、群馬県、埼玉県の地方資料の本格的調査に及んだ。このうち、埼玉県児玉郡の村については、結局、資料が残っていないことが判明し、調査をうち切らざるを得なかった。 一方、群馬県には、かなりの資料が残っていることがわかり、実施計画に書いた、群馬県新田郡、山田郡を中心に綿密な資料調査を行った。群馬県立文書館は、公文書及び私文書について相当量の資料を有しており、ここでの調査は、4度にわたって行うことになった。収集したのは、小作調停、小作慣行調査、地主会、農会、産業組合、耕地整理組合、自作農創設維持、農地委員会、経済更生計画書等、多岐にわたる。これらの資料については、まだ整理中であるが、本研究がめざしている、土地利用に関わる「村」の機能の問題が、小作料の減額免除方式や農地委員会の編成過程、経済更生計画の作成過程などから端緒的にみえてきている。 このような調査を背景に、10月には群馬県新田郡新田町に現地調査に赴き、この地域での小作関係の実態について検討した。また、小作調停条項、とりわけ、小作料減額免除条項について、地主・小作間に特異な緊張関係を見出せる京都府の事例を検討するため、12月には、京都府立総合資料館に調査に赴き、資料を閲覧した。今年度注日した群馬県新田郡、山田郡で見られた小作調停条項は、小作料減額免除に関わる「村」の規制力の再編形態を示唆すると思われるが、京都府の事例は、この「再編」を極限的におしすすめたものともいえ、群馬にみられる「再編」の質を考える好材料を提供するものといえる。こうした成果の上で、来年度も資料調査・分析を続行したい。
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