本年度(平成14)は、前々年、前年度に『唐会要』『旧唐書』『新唐書』『通典』『冊府元亀」等を利用して初歩的整理をした唐代「守法」資料を、まず人物ごとに、ついで事案ごとに整理して、さらに史料を補充(『資治通鑑』等)し、句読点についても再検討を加えた。これらの作業の必要上、東京大学東洋文化研究所、東洋文庫、内閣文庫等で史料の閲覧・調査を行った。 作成した一覧表を基礎とし、唐初の守法の実践者の一人として著名な戴冑の事蹟をあとずけてみた。すなわち史料について言えば、通行本以外の諸版本・鈔本(とくに静嘉堂文庫および台湾故宮博物院蔵の『唐会要」鈔本、宋版『通典」、宋版『冊府元亀」残巻等を利用)を用いて字句の対校を行い、可能な場合は文字の是非の判断を加えた。戴冑は、明主太宗に対しても臆することなく反対の意見を表明した官人である。とくに長孫無忌帯刀入閤事件に際しての彼の諫言は、よく知られている。その検討の結果は、拙稿「初唐の戴冑-『守法』から見たその人と事跡-」(『明治大学社会科学研究所紀要』41巻2号、2003)として発表した。本稿は紙幅に制限があったため、続篇の執筆も考えている。 なお上記の守法史料一覧表と論文は、その他の関連資料とともに近刊の研究報告集に収載する。
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