本研究は「過去の深刻な国家の人権侵害犠牲者への名誉回復・賠償」について、韓国と台湾を中心に比較検討するものである。平成12年度は基礎研究を目指し、基礎資料の収集に努めた。5月には、光州事件50周年シンポジウムに参加し、光州事件や朝鮮戦争前後時期の民間人虐殺関連資料を得た。9月には台湾で朱徳蘭博士の協力を得て立法院(国会)会議録を入手し、「戒厳時期不當叛乱曁匪諜審判案件補償基金会」や「二二八事件補償基会」を訪れ、補償審査事務の一端を見聞するとともに、関係資料の収集を行った。「台湾地区政治受難人互助会」を訪れ、証言を聞くとともに、資料の収集を行った。この資料をもとに「戒厳時期不當叛乱曁匪諜審判案件補償條例の研究」を執筆し、『立命館法学』271・272合併号に寄稿した。平成13年度2月には、韓国の「民主化運動関連者名誉回復及び補償審議委員会」(民主化委員会)や「済州4・3事件委員会」、「韓国戦争前後民間人虐殺真相糾明と名誉回復のための汎国委員会」などを訪問、資料収集した。これらは、間もなく「民主化運動関連者名誉回復及び補償法の研究」として整理する予定である。本テーマと関わって、平成12年5月24日に法社会学会において、「東アジアの国家テロリズム」を発表し、6月30日にはソウル大学から金貴玉博士を招き「韓国戦争を前後とする『良民虐殺』について」、11月17日には、韓国放送通信大学から「済州4・3事件委員会」専門委員の金淳泰教授と「民主化委員会」専門委員の姜慶善教授が、それぞれ「済州4・3特別法をめぐる諸問題」、「民主化運動関連者名誉回復・補償法の成立と実施をめぐって」という発表をおこなった。平成13年1月29日には、東国大学の姜〓求教授から「朝鮮戦争時期の民間人虐殺-世界史的コンテクストから-」の発表があった。さらに、韓国では韓寅燮博士、台湾では朱徳蘭博士等の協力を得、関係文献資料総目録を作成中である。
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