本研究では、東アジアにおける深刻な人権侵害をテーマに韓国と台湾に焦点を当て、調査と比較研究を行い、東アジアにおける問題の性格と構造を明らかにした。また、本研究では韓国での現地調査、台湾での現地調査を通じて基礎資料を収集した。 まず研究報告としては2000年6月30日に金貴玉(ソウル大社会発展研究所)による、「朝鮮戦争前後とする民間人虐殺」が、2000年11月19日には、企順泰(韓国放送通信大)の「『済州4・3特別法』をめぐる諸問題」、姜慶善(韓国放送通信大)の「韓国の『民主化運動関連者名誉回復・補償法』の成立と実施をめぐって」が報告された。研究のまとめとして、2001年<シンポジウム>「東アジアにおける国家暴力・重大な人権侵害からの回復-韓国と台湾」のテーマの下に、(1)朱徳蘭(台湾中央研究院)「台湾『白色テロ』関係文献探索」(2)韓寅燮(ソウル法科大学)「韓国の国家暴力に対する法的処理の基本原則とその適用」(3)徐勝(立命館大学)の「東アジアの国家暴力の被害からの回復-韓国と台湾の比較」の三本の報告が成された(この報告の加筆訂正されたものは、科研報告書所収)。各報告論文に加えて、徐勝が「台湾「戒厳時期叛乱曁匪諜不當審判案件補償條例」の研究-その成立と改正をめぐって-」を執筆し、また現地調査などを通じて、報告書の付録所収の(1)処置叛乱犯相関法令一覧表(2)台湾地区戒厳時期国家暴力與人権侵害関係資料目録(以上、2件は朱徳蘭研究協力員による)(3)韓国民間人虐殺関係資料目録(研究補助者を使い徐勝が作成し、全資料を確保)などの基礎資料を作成した。 本研究は、韓国と台湾の民主化の過程で、冷戦下独裁政権による深刻な人権侵害(gross human rights violation)の犠牲者の回復において、韓国と台湾の特殊性が反映されているが、普遍的な原則が比較的貫徹されており、特に韓国の光州特別法は、世界的に優れた立法事例である事を明らかにした。今回の研究で蓄積された成果・資料は今後の研究の跳躍台として貴重なものである。
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