司法改革を真に実効あらしめるためには、現在のわが国社会における市民の法的側面における民度を飛躍的に高めなければならない。さもなければ、いつまでも根回しや真実とは異なる全員一致の慣行が通用し続ける。いかに、日本で法を機能させるために法教育を、とりわけ公法学に即して実践していくか、その模範を探る作業がこの2年間の科研費による研究の課題であった。この間、2度、ドイツを訪問し、複数の州でドイツの職業訓練学校を訪問して、実際の法教育の教室を見学し、また、州の法教育担当者、その他多くの関係者と面談した。さらに、ギムナジウムの法教育を行っている副校長等と面談したり、研究者と市民社会、学校・大学における法教育の現状と課題について意見交換と今後の研究方針を打ち合わせた。本研究における一連の取材と国内における調査や中・高校での教科書分析によって、わが国の法教育が時間的にも内容的にもきわめて不充分であること、しかし、同時に、法教育の改革方向についての見通しもある程度は解明できたと考えている。さらに、法教育自体を文書において位置づけていることを実証するために、ドイツの各州で使用されている政府の法教育指針や各種資料も多数入手した。ただ、わが国では「ゆとり教育」の観点から、教育時間が削減され、また大学やロー・スクールにおける教育においても実務教育ないし実地教育が適切に取り入れられるかどうか、大きな危惧がある。例えば、一般の大学で使用されている法学テキストによる例えば行政法教育は、きわめて実用性に欠ける。この点を、テキスト面、カリキュラム編成面、講師陣の側面などで、どう対処していくかが今後の大きな課題となる。
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