本研究の目的は、デジタル化時代の情報法制を検討することである。衛星放送を用いたデジタル放送が2000年末に開始されるともに、地上波放送のデジタル化についても制度化が進行しつつある。また、ストリーミング技術等によるインターネットを通じた放送類似サービスも多様な形で展開されている。 本年度はまず、放送と通信との融合現象(事業主体、伝送路、サービス内容、端末)をとりあげ、それが従来の制度の適用にさまざまな不整合をもたらしつつあること、今後は、当該サービスがいかなる機能を果しているかに着目した上で、いかなる規制を用意すべきかを決定する機能的アプローチが重要となるであろうとの指摘を行った(「通信と放送」ジュリスト1192号)。 また、メディアが多様化する中で、公共放送としてのNHKの役割と財源とを再検討すべきではないかとの問題提起がなされている。この点については、主に英国のBBCの財源に関する議論状況を参照しつつ、今後のNHKの財源と役割とを展望する文献を用意した(「公共放送の役割と財源」舟田正之・長谷部恭男編『放送制度の現代的展開』(近刊、有斐閣))。 さらに、メディアによる人権侵害に対処するため独立規制機関を設けるべきではないかとの最近の議論に関連して、メディアの表現の自由の保障根拠に関する論稿を数編公表した(「憲法と放送法」月刊民放2000年6月号、「『マスメディアの表現の自由』は『人権』とは異なる」新聞研究2000年12月号)。
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