2000年度より2002年度までの3年間、科研費補助金をうけ、「ニュージーランド行政革命と国立大学のエージェンシー化の憲法学的研究」を行った。その研究成果の一部として2001年9月に地域科学部の紀要に「国立大学の独立行政法人化?ニュージーランド国立大学のエージェンシー化から考える」を発表した。ニュージーランド国立大学のエージェンシー化の概観を行ったが、同時に資料としてニュージーランドビクトリア大学の政治学教授のスティーブン・レビン教授のニュージーランド国立大学のエージェンシー化に関する二つのきわめて重要な講演を翻訳し、付録として添付した。この研究の結果としてニュージーランドの大学改革が失敗であったことがわかった。なぜならば大学の研究者達がこの改革を全く支持していないからである。というのも、この改革が、研究者に利益の追求を求め、学生には授業料を払うように求めたからである。それはとても困難なことである。NZの大学は利益団体ではなく、学生達は1992年までは大学まで無償だったからである。レビン教授はNZがユネスコの宣言に逆行して学生から授業料を取っていることに危惧を示しており、ユネスコ(現在日本が事務局長を務めている)は、1998年の高等教育世界宣言で各国政府に大学教育の無償化を求めているからである。大学では弁護士でもあるロースクールの教授だけはこの改革を支持していたが、彼らは医学部教授と同じく学内でよりも学外で稼ぎが大きく、教授の肩書きを利用するために大学にも勤めているという側面もあろう。こういう人々を別とすれば大学の研究者はほとんどが研究で稼ぐなどということは不可能である。地震や天文学をふくむ地学、数学、生態学に稼げる道があるだろうか。これらの学間はニュージーランドの大学ではいまや消滅しつつある。この改革は改革ではなく、ニュージーランドの大学の破壊者であった。これがこの研究の傾向的結論であった。今後、さらにニュージーランド国立大学エージェンシー化の改革の意味を多面的に検討したい。新たな課題としては、大学改革がいかなる影響をNZの教育改革全体に及ぼしたのかについて検討が必要である。
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