平成12年度は、ヨーロッパ地方自治憲章の実施状況及び世界地方自治憲章草案の策定過程を解明するために、ヨーロッパ審議会(CE)と都市・自治体世界調整協会(WACLAC)を訪問し、ヒアリング及び資料収集を行った。ヨーロッパ地方自治憲章(1988年発効)については、CEの附置機関であるヨーロッパ市町村・地域会議の総会において、毎年、締約国における地方自治の実態に関する報告が行われている。現在、これらの報告書の整理・分析を進めているところである。世界地方自治憲章草案は、WACLACが国連人間居住センター(UNCHS)と共同で起草したものであり、現在、第二次草案(2000年4月)が検討に付されている。第二次草案については、『経済と貿易』(182号、2001年)に「世界地方自治憲章第二次草案に関する覚書」と題する研究成果を寄稿した。 その概要は次のとおりである。第一次草案に関する意見聴取会議が世界の各地域で開かれ、北米をのぞくほとんどの地域が憲章制定に向けた積極的支援を約束した。第一次草案及び第二次草案をそのモデルとなったヨーロッパ地方自治憲章と比べると、前二者が直接民主制に関する規定をもっていない点、参加とパートナーシップにおける民間セクターの役割を特に強調している点などに重大な相違点が見られる。前二者が人間居住政策の実現を重視し、後者が地方自治の理念・原則の実現を重視した結果と言えよう。とはいえ、第二次草案は第一次草案に比べると、人民主権や人権保障という地方自治の存在意義を前文でより明確にしている。わが国の地方六団体や旧自治省は、第一次草案、第二次草案の策定過程にほとんど関与しないできた。これはUNCHS福岡事務所、旧自治省、地方六団体の間の連携がうまくとれていないためでもあり、わが国の自治体の利害・意見を国際的に主張するシステムの整備・改善が課題となっている。
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