研究課題に関するヒアリングのため、2001年7月にヨーロッパ評議会のD.コシャボ氏(ストラスブール)とヨーロッパ市町村会議副会長のH.ホフシュルテ氏(ミュンスター)を訪問した。コシャボ氏にはヨーロッパ地方自治憲章の締約国の拡大可能性等について質問した。氏によると、主権国家の単一不可分性を盾に憲章の批准を拒んでいたフランスが批准の方向に動いているという。ホフシュルテ氏には世界地方自治憲章草案の実現の障害等について質問した。氏によると、米国は州政府と連邦政府との調整を理由に草案に反対しているが、米国の背後にいる地方自治の未発展国に配慮している可能性があるという。また、中国は国内における地域分離主義への対応、経済開発政策等の観点から、地方分権を求める草案に反対しているという。 ヨーロッパ地方自治憲章の重要な原理である補完性原理については、H.P.イプゼン、T.オッパーマン、ヨーロッパ評議会等の著作・資料を通じて、各国憲法、特にドイツ基本法においてその原理が国内的にどのような基礎付けを与えられているのかを中心に検討している。ドイツの場合、補完性原理を明文で導入した新しい基本法第23条の規定の解釈が鍵になる。 A.ガッサーの地方自治論については、日程の都合でF.-L.クネーマイヤー教授(ヴュルツブルク大学)を訪問することができなかったが、教授から送られた関係書籍を読む中で、ガッサーがA.トクヴィルと補完性思想を享有していること等がわかっている。
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