ヨーロッパ地方自治憲章の締約国間では地方自治のスタンダード化が着実に進んでいる。東欧の旧社会主義国では民主化・分権化の過程で憲章のスタンダードによる新憲法や地方自治制度が制定された。他方で、地方自治の水準が高いと見られる西欧諸国でも財源保障や自治体監督等の面で地方自治は十分とはいえない。ヨーロッパ地方自治憲章は、これらの国に対しても一定の役割を果たしている。 世界地方自治憲章は地方自治のグローバル・スタンダードを設定する試みである。この試みは米国や中国の反対にあって実現するには至っていないが、わが国もこの草案への対応が必要になってきている。 地方自治のスタンダード化の試みの思想的起源はアドルフ・ガッサーにある。アドルフ・ガッサーは補完性原の原則を軸とする地方自治論を構築した。彼の思想はヨーロッパ地方自治憲章や世界地方自治憲章草案の立脚点と共通し、地方自治(市町村の自由)を民主主義の不可欠の支柱とする点に本質がある。 ヨーロッパ地方自治憲章や世界地方自治憲章の基礎となっている補完性の原則については、ドイツで盛んに論じられてきた。この原則がドイツの連邦基本法上の原則であるかどうかは、今でも見解が分かれている。補完性の原則の憲法規範性を検討することは、わが国における課題でもある。
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