研究概要 |
本研究の目的は、日本国憲法の成立をめぐる、極東委員会、マッカーサー司令部、ワシントンの三面関係の全貌を実証的に解明することである。 本年度も2週間、米国のNational Archives IIとLibrary of Congressで必要な資料の補充を行った。これまでに収集し了えた資料(その中には、例えば、米国陸軍省の「黒衣たち」のこの問題に関するOffice Fileもある)により、この三者間の関係については、全体像だけでなく、詳細な点についても相当程度明らかにできる見通しがっいた。既に資料の基本的整理・分析は概ね了えており、研究成果報告書を纏めた後、速やかに論文、著書をまとめて行くことにしている。 なお、2002年初頭に本研究と研究対象と利用資料がかなりの程度重なるD.M.Hellegersの大著、We The <Japanese> People,2 vols.;Stanford, California, Stanford University Pressが米国で出版された。同書も、米国陸軍省とマッカーサーの関係に焦点をあてたもので、期せずして本研究の見通しの正しさを裏付けたものとなっている(本研究代表者と違い、著者は先行論文を発表しておらず、プライオリティーは当方にある)。もっとも、同書は、昭和21年3月6日の憲法改正草案要綱公表までの期間を扱うものであり、寧ろそれ以降に重点のある本研究に取って代わるものではなく、本研究からみれば、それを補足するものとなっている(筆者らは同書の翻訳権を取得した)。 詳細は成果報告書と後続の論著に委ねざるを得ないが、本研究は、従来の、主として国務省資料とSCAP資料に頼りSCAP報告書の描いて見せたところをなぞるだけのような「マッカーサー中心史観」の憲法制定史像を根本から覆すに足る成果を上げ得たものと判断している。
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