本年度は、「1999年改革」について、とくに、次の研究を行った。 (1)憲法による内閣・内閣総理大臣・行政各部(狭義の行政組織)の位置づけを再考しつつ、行政改革会議『最終報告』およびそれを出発点とする「1999年改革」の評価を試みた。第1に、内閣・内閣総理大臣、とりわけ後者の機能(指導性)強化が唱えられながら、結局、内閣総理大臣の発議権の明確化(内閣法4条2項後段)とその指揮監督権に関する内閣法の規定(閣議方針によること)の「弾力的」「運用」に止まったは、内閣総理大臣ではなく「内閣」に行政権が属するものとする憲法の「壁」を克服し得なかったことを示す。しかし、第2に、内閣の機能強化論自体は、内閣の本来の役割が、狭義の行政(執行)ではなく「執政」ないし「国政指導作用」にあるとする近時の有力な見解に即したもので、憲法理念の「蘇生」を図る試みと評価し得る。第3に、任務基軸の省編成と「新たな省間調整システム」の導入は、分担管理制の硬直化を防止するという観点から、重要な意味を有している。 (2)2001年1月にスタートした新府省について、再編の内容・各府省の系譜・今後の課題等について研究した。本年度公表分としては、省庁体制の歴史的展開を概観した後、内閣府・総務省をとりあげたが、その他の省についても、引き続き研究成果の公表をおこなっていく予定である。 (3)地方分権との関係について、自治組織権の問題を検討した。とくに、「附属機関条例主義」(地方自治法138条の4第3項)に焦点をあて、それが一見、自治組織権を尊重するようでありながら、長の組織編成権を否定する側面を有する点において、自治組織権への制約ともなっていることを明らかにした。
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