「1999年改革」について、内閣・国家行政組織・地方分権に一応区分して、研究の主要成果を示すと、次のようになる。 まず、内閣に関しては、主として、憲法と内閣・国家行政組織という角度から検討を加え、改革の評価を行った。内閣総理大臣ではなく「内閣」に行政権が属するとする憲法の「壁」は改革に対する制約となったが、内閣の機能強化論自体は、憲法理念を「蘇生」する試みといえる。内閣と各省の関係理解に当たっては、後者の前者に対する「補佐」関係を重視することによって、各省間の「壁」を低くすることができよう。改革による任務基軸の省編成と新省間調整システムの導入は、分担管理制の硬直化を防止するという観点から、重要な意味を有する。 次に、中央省庁等の改革によって、中央人事行政機関のうち、人事院には手がつけられなかったが、公務員制度改革に関連して、人事院の役割を改めて再考する必要が生じている。従来、労働基本権制約の「代償」機能とされてきた事務・権限の中には、全面的あるは部分的にそのような性格づけを否定すべきものもある。他方、警察組織については、地方分権改革後も都道府県警察の事務の「国家的性格」が維持されており、警察庁の特殊な組織法上の性格は、省庁再編後も不変である。 最後に、地方分権改革による国・自治体間関係については、基本的に、「関与」法制の核心的部分は維持・継承されており、新たに導入された国・自治体間紛争処理制度も、審査の申出や出訴はもっぱら自治体側から行うこととされ、国の関与に優先的効果を認める仕組みになっていること、行政主体間の紛争でありながら機関訴訟として構成されていることなど、なお見直しの余地を残すものとなっている。
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