研究概要 |
本研究は,国際連合の決定とくに安全保障理事会の憲章第7章の下でとられる拘束力のある決定が国連憲章と適合するか否か,その合法性(合憲章性)の審査を国際司法裁判所が行いうるかどうかを法的な観点から検討するものである。この問題は,とくに安保理決定が特定の国連加盟国の損益を侵害するとみられるときに重要な争点となる。 この司法審査の可否の問題は、現在、同裁判所に係属中のロッカービー航空機事件で大きな争点となっている。裁判所はこれについて最終的な態度を明らかにしていないが,調査の結果,これについては裁判官の間にかなり深い意見の対立があること,また学説も二分していることが明らかとなった。すなわち,司法審査の肯定論と否定論である。 平成12年度の研究では,両論の法的根拠をかなり詳細に調べることができた。そこで,本年度(13年度)になってこれをとりまとめて,その大要を大学の紀要に発表した(法学論叢第148巻5・6号)。その後、さらに関係資料を調査するとともに,上記論文の検証作業をすすめた結果、基本的内容について変更すべき点はなかったが,全体の構成方法と論証の仕方について,いく点かを補正する必要に迫られた。この補正作業の結果は,本年度の「研究成果報告書」(冊子体)にとりまとめる予定である。また,この最終成果は,本報告者が近く刊行を予定している著書『国際裁判の研究[第2巻]』(有斐閣)に収録するつもりである。なお,この間に裁判所の判断が下されたときは,さらに補正が必要となる。
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