研究概要 |
2年度(平成12〜13年度)にわたる本研究の成果は,概要,次のとおりである。問題の主題は、国際司法裁判所(ICJ)が安保理の拘束力のある決定(国連憲章第7章)の同憲章との適合性,すなわち合憲章性(合法性)の司法審査を行いうるかどうかということであるが,本研究では,これを肯定する法的結論を得ることができた。ただし,否定論もいぜんとして有力に存在するので,本研究ではこれを肯定する法的論拠を具体的に展開することに最大の目標をおいた。 まず本研究では,ひと口に「司法審査」といっても,ICJの場合は,欧州共同体裁判所のような「制度的司法審査」は憲章上では設定されていないので,具体的裁判事件の提起とともに問題となる「付随的司法審査」であることを明らかにしたうえで,その法的許容性の考察をすすめた。(1)まず憲章規定との関係で,とりわけ安保理には重要な政治的任務・権限が与えられているが,にもかかわらず,ICJの司法審査が否認されなければならないとする解釈上の根拠は見出せないこと(ICJの司法機能も憲章上重要な地位を占める),(2)次に憲章の起草過程(1945年)における経過を検討し,その際に若干問題となる経緯(ベルギー提案の不採択)がなくはないが,解釈上,その経過は審査の法的障害とはならないこと,(3)ICJの判例として,これまで勧告的意見の事例のなかにICJが国連決定の合法性を審査した先例があり,そのアプローチが裁判事件の審査にもあてはまること,をそれぞれ論証した。 最後に,本研究は,ICJの審査結果として安保理決定の違法性が認定された場合,当該安保理決定にいがなる効果が認められるべきか,ありうる三つの立場を示しつつ,ICJのとるべき立場を提示した。
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