国家の同一性または継続性は国家の消滅、新国家の樹立、そして国家承継にかかわる問題である。しかし、国家の消滅・新国家の樹立・国家承継に関する国際法に比べて国家の同一性または継続性自体を規律する国際法の内容は不明な点が多い。現在の時点で確認できるものとしては、(1)領土の変動、(2)非合法的な政府変更、(3)領土の戦時占領の三つは国家の同一性・継続性に影響しないということだけである。いわゆる「復活した国家(resurrected states)」の同一性・継続性を法的に判断するに適用されうる国際法は現段階では充分に発達していないように思われる。 大韓帝国と大韓民国との法的関係に関して、韓国政府がそれを政体の変更にも拘わらず国家として継続したものとみるか、それとも大韓民国を大韓帝国の「復活」とみるかは明らかでない。しかし、韓国政府は大韓帝国と大韓民国との間には国家的同一性が存在するとしている。それは韓国外務部(現、外交通商部)による「大韓帝国が締結した多者条約の効力確認」とその説明資料等で明らかである。条約の承継に関してみれば、大韓帝国が1900年に加入した万国郵便協約、1903年に加入した赤十字協約は大韓民国の当事者地位の承継が認められた。また、万国郵便連合と関連しては、大韓帝国が持っていた加盟国の地位を大韓民国が回復したことが認められた。ソウル所在の旧ロシア領事館敷地に対する旧ソ連の権利が認められたことも、大韓帝国と大韓民国との国家的同一性を前提にしたものと思われる。しかし、以上の事例にも拘わらず、大韓帝国と大韓民国との国家的同一性が国際法的に論証されているとは言えない。また、植民地支配期に日本が締結した条約の効力なども問題として残っている。
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